Woman’s おすすめポイント
2004年に製作された「THE王道」なラブストーリーです。王道なだけに、ストーリー展開も予想できてしまうほどですが、それでも映画に求めるものが安心安定な時や、ハッピーエンドで気分が下がらない映画が観たい時であれば、だらだらと観るのにはちょうどいい映画です。王道はつまらないものにもなり得ますが、王道だからこそ自分の”用途”に合わせられるという魅力もあります。ジュリアン・ムーアが44歳の頃の映画ということになりますが、44歳に見えるような、見えないような・・・そんな品がある美しさをジュリアンから学ぶつもりで観るのもオススメです。
ジュリアン・ムーアの魅力
ジュリアン・ムーアは、【ブギーナイツ】【エデンより彼方に】【めぐりあう時間たち】【ハンガーゲーム】シリーズ、【アリスのままで】など、数々の賞を受賞した出演作品が多い、言わずと知れた名女優です。もちろん見た目が美しいのは然ることながら、彼女の目が訴えるものの多さには、いつも感服するばかりです。美しいのだけれど、どこか体が弱そうな脆さと、目力から感じる根底の強さみたいなものが入り混じる、不思議な雰囲気を持っている女性です。そんな彼女が今回演じているのは、婚期を少々逃したバリバリ働く敏腕離婚弁護士オードリー役ですが、彼女は、弁護の腕が立つキャリアウーマンでありながら、孤独を感じている1人の女性でもあります。強さと脆さを両方持ち合わせる役をうまくこなしている様子が伝わります。そして何よりも、彼女が持っている”少女感”が消えていないことも、この物語を楽しくさせているでしょう。
ピアース・ブロスナンの魅力
ピアースは、【007】シリーズで名を馳せているかもしれませんが、時折ラブコメでも登場する安定の年上色男です。2012年サラ・ジェシカ・パーカー主演の【ケイト・レディが完璧な理由】や2013年【愛さえあれば】、そして【マンマ・ミーア!】シリーズにも出演していますが、受け止めてくれそうな広い心を持った、余裕のある大人を見事に演じています。今回はダニエル・ラファティ弁護士役。弁護士としては少々型破りな感じが、余裕たっぷりといった感じで、王道ラブストーリーに持って来いの相手役と言えるでしょう。何よりボンド映画で数を着こなしているからなのか、スーツ姿がとてもお似合いです。今回も、ジュリアン・ムーア演じるオードリーからプレゼントされた真っ赤なネクタイを着けたスーツ姿、最高にキマっていました。
離婚弁護士が自身の結婚で悩む姿から学べる事
忙しすぎて恋人は持てないと言う女性の80パーセントは孤独なのよ
冒頭でオードリーの母親がオードリーに説くシーン(字幕版日本語訳)
そんな台詞から始まる【恋の法律】ですが、ジュリアン・ムーア演じるオードリー・ウッズも確実にその一人でした。敏腕離婚弁護士としてキャリアを確実に積んできた彼女にとって、結婚は現実であり、時に最悪の結末を迎えるものであり、そして身近なものであったに違いありません。そんな彼女が酔っ払った勢いで、記憶もあいまいなままに結婚をしてしまうということは、そうとうショッキングな出来事だったに違いありません。他人の”離婚”を通して、心のどこかで“結婚”を意識していたのでしょう。だからこそ、勢いで結婚をした時も、目の前の相手がもしかしたら自分にふさわしい人かもしれないとは考えずに、「そんなの間違っている!」と決めつけてしまったのです。離婚という角度からしか結婚を見ていなかっただけに、行きずりの結婚ではなく、”完璧な結婚”でなければ許せなかったのだろうと思います。
オードリーが行きずりの結婚を望まないのは、これまで離婚を目の当たりにしてきて、自分は離婚をしたくないと思ったからだと思います。しかし、何事もそうですが、もし自分の望んでいたものが手に入りそうなとき、それが崩れることを見据えて尻込みしてよいのは、未来を予想できる人間だけです。確実な行く末なんて誰も想像することはできませんし、ならば見なければいけないのは”今、目の前”だからです。今、自分は楽しいのか、目の前の人が好きなのか、そこから身をゆだねるしかないのです。いろいろな離婚劇を見てきたであろうオードリーやダニエルが、2人の結婚のために”闘う”と決意したシーンは、頭で失敗例を考えず、心で動いた良いシーンでした。
昔の王道ラブコメのストーリーと雰囲気が落ち着く
2000年前半、この時代は傑作ラブコメが世に多く輩出されている時代だと思われます。そのためか、王道のラブコメストーリーなるものが出来上がってきていました。【恋の法則】も王道なラブコメのうちの1つです。王道ラブコメのストーリー展開は、
- 最悪な出会い、うまく行かない時期
- 相手の良いところが見える、ちょっとだけうまく行き始める
- 相手とすっかり意気投合、ゴールイン!と思いはじめる
- 相手の裏切り発覚
- さっきまでの信頼はひっくり返り大嫌いになる、ひどいこと言っちゃう
- それでもあなたが忘れられない!大好き!or相手のしたことの真意を知ってごめんね!大好き!
と、こんな具合で形成されています。これを今回のストーリーに当てはめると、
- いけ好かない弁護士が到来、裁判が相手のペースに飲み込まれて悔しい
- 一緒に飲んで楽しい!そして一夜を共にして嬉しい!
- 彼と結婚してしまった!?びっくりして離婚したいと騒いだけど意外とドキドキ…
- 裁判で裏切り発覚
- 怒ってひどいこと言う。相手が自分を好きだと知るとともに、離婚に同意される。
- 去っていくあの人を追う!思いを伝える!
と、展開が正統派です。映画の全体的な色味が、少し古い映像にあるセピアがかったロマンティックな色味で、曲も少し時代を感じるのが、少し前の定番ラブコメを見る良さと言えるでしょう。
ゆっくりだらだらしながら観るのにいい映画
王道なだけあって、そこまで驚くようなシーンがないことも事実です。しかし、それだけに安心して観ることができるのもまた、事実なのです。王道ラブコメの良さは、王道だからこそ、何があっても必ずハッピーエンドが待っているという保証付きであることではないでしょうか。いつも何が起こるか分からない状況の中で生きている私たちにとって、束の間でも、安心して観ることができるストーリーは、時に私たちをリラックスさせてくれます。この映画は驚きは特にないかもしれませんが、心がホッとし、軽い気持ちで観ることができることでしょう。ぜひ、お家でまったりと過ごしながら、観てみてはいかがでしょうか?
Woman’s おまけポイント
邦題は【恋の法律】ですが、英題は【Laws of Attraction】というのが、この映画の本当の名前です。邦題【恋の法律】は、主人公である2人の弁護士の結婚の仕方から、結婚とは法の下にするから結婚なのではなく、2人の思いがそこに在れば結婚なのだ、と説いていることを物語のテーマと捉えている気がします。同時に英題【Laws of Attraction】は、lawは法律、法、おきてなどを意味し、attractionは魅力、引きつけることなどを意味することを考えれば、直訳すれば”惹きつける法”とも捉えられます。つまり、2人はもともと法律関係の仕事をしていることから、”法”が2人の出会うきっかけであったこと、また、”結婚”という法的な措置(とても冷ややかな言い方ですが)を以て、互いを意識し始めたという、2人が心を通わせるきっかけも”法”であったことを意味しており、邦題英題ともに題名から、この物語の謂わんとしていることが良く伝わる題名でした。結果、結婚していてもしていなくても、目の前にいる人を愛せるか愛せないかは、当事者の心が決めなければ何も始まらないのです。
kato
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