Woman’s おすすめポイント
好ましくない現状から抜け出したいと思っている人に贈りたい映画です。衝撃的ラストに、誰もが涙すること間違いなしのこの映画では、なんとなく今の暮らしを気に入っていなくて、目標を持ったり、やりたいことに自発的に挑戦する気持ちを失いかけている人に、「どう生きるか」を考えるきっかけをくれることでしょう。人馴染みの良いエミリア・クラークが務める主役は、良い意味で素朴で、どこにでもいそうな迷える若き女の子です。そんな彼女が、生き方と向き合う姿は、私たちに勇気と希望を与えてくれます。ヘンリー・ゴールディング演じるトムは、まるで”サンタクロース”のように、「どう生きるか」を考えるきっかけをエミリアに与え続けると同時に、私たちも一緒に考えてしまうことでしょう。
トムが教えてくれたこと①幸せは、見ようとしなければ見えないものだ
主人公ケイトはクリスマスグッズを扱う店で、サンタの遣いの”エルフ”として働いています。クリスマスは多くの人にとって、夢と希望に満ちた嬉しい行事ですが、クリスマスグッズの店で働く彼女にとっては、クリスマスは日常であり、どこか冷めた目で見ている様子が見て取れます。クリスマスを冷めた目で見る彼女は、人生に対しても同じような感覚でいました。自分の人生は最悪だと言わんばかりの態度で生きており、その荒れた私生活と人生に対する偏見から、家族や友人への態度も褒められたものではありません。自分が本当はどういう人間で、どう生きたいのか、それが分からず、適当に生きてしまうがゆえに、家族や友人との関係がうまくいきません。そんな矢先に、ヘンリー・ゴールディング演じるトムに出会うのです。クリスマスも、人生も、キラキラしたものにするのか否かは、それらへの向き合い方、つまり自分の行動に他ならないということを、ストーリー全体を通して伝えています。
日常の小さな行動がその人の人格を作る
【ラスト・クリスマス】トムの自宅にてトムが救われた一言をケイトに教えるシーン 字幕版日本語訳より
トムがケイトを励ました言葉通り、トムはケイトに見えないものを見ようとし、受け入れられなかったことを受け入れ、やれることを行動に移すことを教え続けます。トムはケイトに、「上を見ること」を事あるごとに伝えますが、それはまるで、クリスマスのように人生をどうでもよさそうに過ごしてしまうケイトに、まだ見てないものがあることを伝えているかのようでした。見ようとしなければ見えない景色を、もう一度見させてくれるトムは、彼女の心だけでなく、私たちの心をも溶かしていくことでしょう。また、トムがケイトに上を向くように勧める最大の理由は、物語の最後に知ることになることでしょう。
トムが教えてくれたこと②日常に、人生に、”クリスマス”の心を
ケイトがホームレスの人々を助けたいと思うきっかけとなったのもトムでした。はじめはトムがホームレスを救済するボランティア施設にいると思い、トムに会いに行く目的でそこに足を運びます。しかし結局そこにはトムはおらず、半ば強制的にボランティアをさせられることになります。はじめは、ボランティアに対して聖人のすることだ、などと真剣に捉えてはいませんでしたが、日々の積み重ねが人生を変えることを、トムから教わったケイトは、彼らのために自分ができることを始めたのでした。
トムは、サンタクロースのように、ケイトに”クリスマス”をプレゼントしたのでしょう。ここでいう”クリスマス”とは、困っている人や身近な大切な人のために手を差し伸べ、自分にできることに取り組むクリスマス精神のことです。クリスマスにも人生にも向き合い方が分からないケイトは、身近な人を大切にできていませんでした。そんなケイトに対しトムは、「クリスマスだから優しくしなさい」というよりも、「人生にクリスマス精神を」、つまり「日常にクリスマスを」というように、日々を丁寧に生きることを説いているのです。
トムとの距離が縮まるほどに、トムとのお別れが近づいていく
トムはいつでもケイトに会いに来るというわけではありませんでした。トムが現れるのは、彼女がいると知らずに、バーで知り合った男性と一夜を共にしてしまい、彼女に恨まれ家を追い出された日や、大事な面接に失敗したとき、店の鍵をかけ忘れて泥棒が入ったときなど、彼女が最悪な1日を過ごしている日に現れます。反対に、問題はありながらも家族と団欒をしたり、店のオーナーが惚れている男性客との関係を取り持ったり、ホームレスを助けるための路上ライブをしている日など、前向きに行動ができた時には現れません。トムは、ケイトに前向きに生きて欲しいのです。
その理由は、ケイトがトムの部屋を訪れた時に明らかになります。トムは、ケイトの1番近くに居て支えてくれているからこそ、ケイトがトムを好きになるほどに、トムを手に入れることができないことを知るのです。ケイトが、トムから「話がある」と持ち掛けられた時に、トムもこれまでの男と同様に自分をだましたのだと思い、言い放つ言葉があります。
私の大切な心を 捨てるような人には渡さない
【ラスト・クリスマス】トムがケイトに本当のことを打ち明けようとしたときに、ケイトが誤解して放つ一言 字幕版日本語訳より
この言葉を聞いて、初めはケイトを傷つけたと思い弁解しようとするのですが、そのあとでトムは何故だか少しほっとしたような表情を見せるのです。ケイトは以前にトムに、心臓の移植手術をしてから、自分のではない心臓に生かされていることに、違和感を覚えていたことを話しています。そのことから、ケイトが誰かからもらった心臓を「私の大切な心」と、思えるようになったことが、嬉しかったからなのでしょう。これほどまでに、ケイトはトムに支えられ、前向きに生きられるようになればなるほど、トムとの関係がなかなかうまく行かない、そんな切ないシーンが最後に多くあります。
人に優しくできると、自分にも優しさが返ってくる
初めのころのケイトは、友人の家にお世話になっているにも関わらず、彼らのお気に入りのものや大切にしているペットを壊したり殺したり、友人の家に男を連れ込んだりしてしまい、友人から家に泊まることを嫌がられてしまいます。同時期には仕事でもうまくいきません。勤めているクリスマスグッズの店でも、ケイトが店の鍵をかけ忘れたことで、オーナーを悲しませてしまいます。助けてもらっているのに、感謝をするどころか、自覚に欠けた行動により、友人を失う、店のオーナーからの信頼を失うという形で、ケイトにマイナスが返ってきてしまっている状態でした。
しかし、店のオーナーの信頼を再び勝ち取ることができるように、トムのアドバイス通り、オーナー”サンタ”のために一生懸命になったケイトは、オーナーと男性客との恋を応援したり、月曜日にラテを差し入れしたり、店番もさぼらずに行ったりとするようになります。その努力が実り、再びオーナーから認められるようになる頃には、初めのころよりもオーナーとの仲も深まり、ランチをご馳走してもらったり、より仲睦まじくさせてもらったりできるようになります。お詫びや感謝をしそびれていた家族や友人にも、お詫びをしにお宅訪問をしたり、お詫びの品をプレゼントしたり、苦手だった母親と2人で出かけて楽しい時間を過ごしたりし、彼らとの関係も少しずつ修繕されていきます。つまり、ケイトの善行が、ケイトに返っていることが明らかに分かるのです。状況を打破したいなら、やはり自分から行動しなければならない、誰かが手を差し伸べてくれるのを待っていてはダメなんだ、ということが手に取るように分かります。
ホリデイシーズンにおすすめなほっこりするシーンと曲
ケイトが、はじめて歌でお金を稼いだシーンは、その感動がとても伝わってくるシーンでした。ケイトを演じるエミリア・クラークは、表情が豊かな女優の1人ですが、彼女の嬉しそうな顔は本当に魅力的です。また、舞台のオーディションで歌ったときには、審査員に酷評されていたケイトの歌が、道端でホームレスの生活を応援するために歌った歌では大成功する、この意味を考えずにはいられません。これには、ケイトが舞台に立つことを、本当に望んでいたのかどうか、自分が本当に望むことを見つけられていたかどうか、という”自分探し”をする人へ向けたメッセージにもなっているのではないでしょうか。自分がこれだと信じて突き進んでいた道が本当に正しいのか、今の自分が本当に望むことは何なのか、自分と向き合う時間の大切さを物語っています。
ケイトが歌う歌もそうですが、ケイトがトムの家を出てから、いろいろなことに挑戦するときの曲、ジョージ・マイケルのHeal the Painは前向きな気持ちにさせてくれますし、炊き出しの列の横でホームレスたちにも歌わせている時の曲同じくジョージ・マイケルのFaithは気分が上がります。他にも定番のワム!のラストクリスマスなど、クリスマスシーズンに持って来いの曲となっています。映画の中のケイトのセリフに、ジョージ・マイケルの名前が出ていることなどから、ジョージをフォーカスした映画のようです。
Woman’s おまけポイント
今回、不思議な役回りのトムを演じている、ヘンリー・ゴールディングですが、今回クリスマスグッズ店オーナーを演じたミシェール・ヨーも出演している【クレイジー・リッチ!】やアナ・ケンドリックとブレイク・ライブリーが主演を務める【シンプル・フェイバー】などにも出演している、現在33歳、注目のアジア系若手俳優さんです。【クレイジー・リッチ!】では正統派イケメンを演じ切り、【シンプル・フェイバー】ではちょっぴりシリアスな中での演技でしたが、【ラスト・クリスマス】では、ちょっとミュージカル?パントマイム?のような動きがあったり、ちょっと変わった雰囲気を持つ設定であったりと、ファンタジーな一面も見せてくれています。バリバリ洋風なイケメンが好みの方は初見では、「タイプじゃないな、、」と思うかもしれませんが、落ち着いた身のこなしや、見つめる眼差しなど、なぜか見入ってしまう、不思議な魅力を持ったイケメンです。
kato
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