洋画【幸せのポートレート】の楽しみ方

merry christmas sign ヒューマンドラマ
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プロローグ

ちょっと日本人には馴染みが薄いテーマだと、洋画があまり得意でない人や、まだ洋画入門生だよ!という人にはあまり響かず面白さが伝わりづらいものです。でもその躓きが、一生洋画キライになるきっかけになることもしばしば・・・。そんなの悲しい!と洋画大好き人間は思うわけです。人種差別や性差別や障害者差別などが盛り込まれた【幸せのポートレート】も例外ではないのだろうと思います。けれどこの映画も面白い。何度も観たくなるような不思議な魅力がある【幸せのポートレート】を楽しんでいただきたいものです。

“差別”してなくても”区別”してない?人間関係を見直すきっかけに。

woman sitting near white wooden door
Photo by Masha Raymers on Pexels.com

サラ・ジェシカ・パーカー演じるメレディスの側から観ることが少ない【幸せのポートレート】。けれど、メレディスサイドからも観ていただきたいところです。”人種差別””性差別””障害者差別”と名前が存在する差別と同じようにかそれ以上に日常的に起こる、”区別”という名の小さな拒否反応の目が、メレディスに注がれていることに気がつくとき、【幸せのポートレート】を骨の髄まで吸収している気持ちになれます。パーソナルな問題に対しては声量小さめな日本ですが、それゆえに”区別”という拒否反応は、もしかしたら海外よりも陰湿なものかもしれません。馴染みが薄い問題を挙げた作品、として片付けてしまうことができない、日本人にも刺さるストーリーなのです。

大人の女性が彼氏の実家のクリスマスにお邪魔する、という世間一般的にハードルの高いイベントにおいて、彼の家族が、自分のことを好いていないことを肌で感じられる状況は、とてつもなくキツいですよね。メレディスと会ったことがあるレイチェル・マクアダムス演じる末の妹エイミーが、その時の印象を家族に話し、家族のほとんど全員がメレディスを「私たちとは違う世界の人」と言わんばかりに”区別”してしまっています。エイミーと会った時も、実家にお邪魔した時も、緊張していたかもしれないのに、「堅物で都会的で冷たく空気の読めない女」とはじめから好意的には見られていないのです。

“性差別””人種差別””障害者差別”、あらゆる差別への対応がなってないとされるメレディスですが、メレディスこそある意味”差別”をされている状況下にいたことは否めません。それはクレア・デインズ演じるメレディスの妹ジュリーと、ストーン家の関係性を見ると明らかです。ジュリーの愛嬌あるオープンな雰囲気はこの家族の持つ雰囲気と合っていて、その上で人種差別に近い発言をしても、失言とはみなされませんでした。「自分たちと感覚が近い存在」として愛されたジュリーの発言だからこそ、「悪い意味で言っているわけがない」と印象付けられ、温かい対応で返されたのでしょう。もちろんメレディスも緊張から墓穴を掘ってしまっていますが、受け取る側の対応にここまで差が出るのには、好意的な目で見られているか否かが関わっていることは明白でしょう。【恋するポートレート】では、大きな意味で人と人が相手を受け入れる大きな心を持ち合うことで初めて関係を築く第一歩が踏み出されるということを教えてくれるのです。

完璧でないほうが愛らしい。がすっごく伝わる。

anonymous woman touching fruits on shrubs in countryside
Photo by Rachel Claire on Pexels.com

サラ・ジェシカ・パーカーのSATC時代のいつまでもキュートな女性像を欲して【幸せのポートレート】を観る人にとっては、愛らしいサラを観られるまでには時間がかかることだけお伝えしたいところです。サラ演じるメレディスは、仕事ができる都会の女性です。そのために自分の個性的な部分や奔放な部分は隠して、デキる女を演じています。だからこそ余計に神経質になるのですが、そんなメレディスに愛想を尽かして面白くない!と流し観しちゃうのはもったいない!メレディスはちゃんと殻を破りますから、広い心で待ってあげましょう。

ルーク・ウィルソン演じるベンが、メレディスを救う唯一のストーン家の人間なのですが、ベンに救われた後のメレディスが可愛すぎます・・・。カッチカチだったビジネスウーマンのメレディスが本当の自分を出してくれます。ずっと自分の心の中に溜め込んでいた切ない事実を口に出して『誰も私なんか愛してくれないのね~~~』と泣き、それでもまだデキる女を演じて自分を保とうとするも、失敗して泣き・・・とボロボロになっていくメレディスがあまりに人間らしく、どうにもこうにも愛さずにはいられないのです(メレディスが聞いたら怒るでしょうけど!)。人が人を愛するきっかけというのは、図らずも完璧でない瞬間なのかもしれませんね。

このシーンにおいてもう一つ印象的なのが、この時のベンの顔。他のストーン家の者たちは、メレディスに対して気まずい表情を取る中、当初から『努力なんかやめろ』とお堅いメレディスを唯一煙たがらず、本当の自分を出した方がいいと励ましていたベンだけが、いよいよ本当の彼女が現れ出したのを見て、微笑ましいという顔をしています。本当の愛こそ、不完全なありのままのものの上に成り立つことを証明した瞬間のような小さな名場面です。絶対にベンの愛おしそうな表情を見て欲しいですね。

無条件でお互いの味方。そんな家族に会いたくなる。

family celebrating christmas while holding burning sparklers
Photo by Nicole Michalou on Pexels.com

特にダイアン・キートン演じる母シビルと子供たちの関係が素敵です。ストーン家の長男であるダーモット・マロ―二―演じるエヴェレットが、メレディスにプロポーズするために祖母の指輪が欲しいとシビルに伝えるも、なかなか承諾しません。けれどもそれはメレディスがストーン家に合わないからというよりは、エヴェレットが長男坊ゆえに無理して完璧になろうとしていることを感じていたからでした。エヴェレットがもっと自分らしく生きることを望むゆえこのタイミングでの結婚を承諾するのがつらかったシビルが、最終的にはエヴェレットを信じて指輪を託すその気持ち。親としては子供がハードな人生を歩むことは望んでいないでしょう。だからこそ要求したいことが出てくるもので、シビルも自分のそういう気持ちからエヴェレットの人生の選択に加わろうとしてしまいます。けれども最終的には子供が幸せであることを1番に望み、子供が自分で自分の人生を選択することを認めてあげる、シビルの強さが伝わるシーンでした。

同じくシビルの深い愛を感じるのはタイロン・ジョルダーノ演じるサッドに対する場面です。サッドは聴覚が不自由であり、且つ恋人はブライアン・ホワイト演じる黒人男性パトリック。ゲイについてメレディスが『人生はただでさえ厳しいから、親であればゲイという障害を持つ子供ではなく、”正常な子”を望むのでは?』と失言をぶちかましてしまうシーンの後で、落ち込むサッドに対して母親であるシビルは強いまなざしでこう言うのです。

私はあなたを愛してる あなたは誰よりも正常よ

ここにいるイカれた連中よりはるかにね わかってる?

【幸せのポートレート】で母シビルがサッドに言った言葉(字幕版日本語訳より)

母親の無条件で子供を愛する気持ちが、ぎゅー―――っと伝わる場面です。

ザ・クリスマスムービー!クリスマスシーズンにおすすめ!

wood coffee hotel winter
Photo by Anastasia Shuraeva on Pexels.com

クリスマスシーズン映画の中でも、よりリアルなホリデー感が感じられる【幸せのポートレート】。海外大好き人間にとってたまらないイベント”クリスマス”を、より等身大な雰囲気で観られます。プレゼントをたくさん抱えて家族がひとつの家に一堂に会し、抱き合って歓迎し合い、クリスマスに向けての準備をする・・・。海外大好き人間にとって憧れが詰まった映画でもあります。クリスマスツリーにオーナメントを飾ることも、夜の団欒の時間にゲームをすることも、皆でピザをかじりながら話をすることも、何気ないことも全てがイベントと化すこのシーズンの楽しさを味わえます。海外ならではの天井にも届きそうなほどに大きなクリスマスツリーや、暖色系の灯りの醸し出す雰囲気もお洒落で、冬のシーズンらしい温かみが感じられますよ。メレディスが作る”ストラータ”の海外っぽいサイズ感もワクワクしますよね!

エピローグ

red tulips in clear glass vase with water centerpiece near white curtain
Photo by Lisa Fotios on Pexels.com

【幸せのポートレート】には楽しめるポイントがたくさん詰まっているので、全てを味わい尽くしていただきたいものです。キャストも豪華で、大人の女性としてアイコン的存在のダイアン・キートン、【SATC】でお馴染みのサラ・ジェシカ・パーカー、【きみに読む物語】などで知られるレイチェル・マクアダムス、【トワイライト】シリーズのエズミ役で知られるエリザベス・リーサーなどなど、豪華な顔ぶれもまた楽しい映画でした。特にレイチェル・マクアダムスは、”綺麗な子”という感じな役が多いだけに、ちょっとぼさぼさな頭に眼鏡に古着のようなスタイルをした彼女が観られるのが貴重です!しかもそれがまた親近感が湧いて可愛いんですよね~。物語に深みもありながら、愛に溢れた心地よい気持ちで観終われる、最高のクリスマス映画です。

kato

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