Woman’s おすすめポイント
舞台となる1950年代のフランスでは、女性が自分の人生を選び生きていくことは稀で、たいていは親同士が決めた相手と結婚していく運命です。今の時代はそこまで人生において強制されることはありませんが、それでもまだ「好き!」を仕事にできている人はそう多くはいないでしょう。【タイピスト!】は、自分の「好き!」を続け、それを高めていく物語です。今の時代にも存在する壁である『好きなことを仕事にするとキライになる』という壁をも超えていく姿は、時代を超えて、好きなことで夢を叶えたい人への応援ムービーになること間違いなしです。
田舎娘のシンデレラストーリー

もともとは、村から出てきた都会慣れしていない女の子が、タイピングでの世界選手権を目指して上司に特訓を受けるうちに、一躍大スターになっていくシンデレラストーリーです。はじめの秘書の面接のときは、他の女性たちはスーツを着たり眼鏡をかけたりと、賢く、洗練された雰囲気を纏っていますが、明らかにおどおどしている主人公ローズでした。しかし、そんな雰囲気も映画の終盤になると、気高く上品な大人の女性さながらに変貌を遂げています。はじめは地味で控えめだった彼女が、だんだんと自分のしてきた努力に自信を持てるようになっていく姿は、内面から出る自信が、いかにその人を良く見せるかを語っているかのようです。
女性が輝いている作品でモチベが上がる!

田舎から出てきたローズが、鬼(と見せかけてちょっと優しい)トレーナーのルイに見込まれて、タイピング大会に出場するために頑張る姿は、私たちに希望を与えてくれます。この物語の中でも、女性が自分の力で立つ姿は珍しいらしく、前フランスチャンピオンの女性には多くの女性ファンが居ましたし、その後ローズにも女性ファンたちが憧れの気持ちを抱く様子の描写があり、ローズたちは世の女性たちの希望の星であることが分かります。当時の世界では、女性が活躍することがまだまだ難しい世界だったため、活躍している洗練された女性を見つけると、女性たちが熱狂したのでしょう。
女性でも男性でも、自分のモチベーションを上げるためには、目標となる自分より先ゆく人の像が必要になってきます。皆の憧れの的であるローズも、自分の部屋にはオードリー・ヘプバーンや自分の母親の写真を飾っていました。そしてその的が、女性なら女性であれば、志や考え方、人生設計、ライフスタイル、ファッションやメイクなど、取り入れやすいため、熱狂しやすいのです。【タイピスト!】は、まさに夢を叶える女性のお手本と言っても過言ではありません。ローズの輝く姿が、他の女性たちをワクワクさせ輝かせるのです。
デボラ・フランソワが可愛すぎ&ファッションが可愛い!

デボラ・フランソワ演じるローズは、どこか現代版オードリーのような雰囲気を携えています。儚げでありながら、無邪気でもあり、気の強さもある。そんなローズ像は、物語の中でもローズのモチベーションを上げている”オードリー・ヘプバーン”から来ているのでしょう。フランスを舞台にしていることもあり、フレンチチックなファッションはとてもかわいらしく、ローズのキャラクターをより一層魅力的なものにしています。色使いも可愛らしい場面が多く、目を楽しませてくれます。
面接のときの白地にブルーの花柄ワンピース、保険会社のオフィスで着ている白のノースリーブシャツを緑のロングフレアスカートにインするスタイル、グレーの上下セットアップから少しシャツの白襟をのぞかせて、頭には白地に赤の模様の入ったスカーフを巻いた自転車通勤スタイル、水色の半そでシャツに先ほどの緑のフレアスカートを合わせて髪には黒のリボン、タイピングの全仏大会で着た薄水色の肩が出たワンピース、薄い黄色みがかったドレスにショールを羽織るドレスアップスタイル、ルイに見せた真っ赤なタイトワンピース・・・。それぞれに合わせたくるんと巻かれた金髪のヘアセットも、いかにもフランスチックな太めアイライナーに真っ赤な口紅も、ローズの可愛さを引き立てています。
それも、ローズを演じるデボラ・フランソワの魅力あってこそですが、彼女のまっすぐな眼差しや大スターになっても威張らない雰囲気は、彼女自身が持つ魅力から発せられるもののように感じられます。デボラはベルギー出身の女優さんであり、1987年5月24日が誕生日の、現在33歳という若手女優です。その美貌を活かした活躍を、これから期待したいですね!
題材に『フランス』が絡む映画では珍しい、良い意味でのノーマル感

フランスのエッセンスが含まれる映画は、”フランスのイメージ”を表現するがあまり、時に芸術的かつ文学的過ぎる作品になる傾向があるでしょう。簡単に言えば、小難しかったりあらゆる方面(政治、宗教、セクシャル)において過激だったりするということです。芸術的で雰囲気のある街を舞台にするならば、避けては通れないのかもしれません。しかしこの作品は、そういう分かりにくさ、馴染めない演出がない点において好感が持てるのです。もしかしたら、”時代背景”を上手く使い、世界観を時代背景らしく魅せたことが、視聴者に嫌悪感を抱かせずにフランスを舞台にした映画をフランス語で届けることに成功した由縁かもしれません。今までフランス映画に騙され続けた・・・という人にもおすすめできる、フランス映画独特の湿っぽさや不可解さがない映画です。
女は完璧じゃない男がお好き。

主人公ローズを取り巻く男たちは、ローズの成長とともに変化していきます。雇い主であるルイ、彼女がはじめてコンテストで優勝したときにバラを届けに訪れた若い男性、そして彼女が広告塔として活躍することになるタイピングマシーンの会社の男ギルバート。結局ローズが気にかけているのはルイなのですが、そこに女性の心理が隠れているのが面白いものです。
自分が話題となってから追いかけてくる男性ではなく、自分が才能を見出す前から信じて特訓をし続けてくれたルイが気になるのは、女性の心理としては当然なのかもしれません。見かけや肩書にとらわれず、まして自分のエゴのために利用される者としてではなく、純粋に応援してくれる人を人はすきになるのですよね。ルイこそ中のボブとローズのコンテストの結果について賭け事こそしていますが、それだけでないことは、ローズが一番身をもって感じていたに違いありません。そんな真心を感じるラブストーリーでした。
Woman’s おまけポイント

ローズが愛していると伝えた後にルイに「僕は違う」と返された時の返答が、とても印象に残っています。
ウソよ ウソつきだもの
【タイピスト!】にてローズがルイに愛を告白した際のルイの言葉に反論するローズのセリフ(字幕版日本語訳)
これって、なかなか言えないと思います。それほどまでに相手からの愛を感じなければ言えないし、それが間違いじゃないと言い切れなければ言うことはできないはずです。海外の映画独特だな~と思う言い回しの1つではないでしょうか。でも、それだけルイの行動1つ1つは優しさに溢れていました。不器用だけれど、思いが伝わる瞬間、そんな瞬間ってありますよね。
kat
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